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フリーランス技術者の居場所をどう作る? コミュニティ活性化のポイントと運営の工夫(第4回/全5回)

  • INTLOOP Ventures Innovation Community編集部
  • 4月18日
  • 読了時間: 8分


イントロダクション


前回(第3回)では、ベンチャーやスタートアップにおけるコミュニティの意義と必要性についてディスカッションを行いました。今回は、そこから一歩踏み込み、具体的に「どのようにコミュニティを形成し、活性化させていくのか?」について議論を進めていきます。


特に専門的スキルを持つ技術者同士がつながり、知識を共有し、高め合う場をつくることは、技術革新の加速にもつながる重要な要素です。しかし、ただ集まるだけではなく、いかにして「価値ある場」として機能させるか。コミュニティ運営の工夫や、成功するコミュニティの特徴とは何なのか? 現場のリアルな視点を交えながら、より実践的なヒントを探ります。





―― 前回の対談では、お二人それぞれの経験を踏まえて、コミュニティの必要性や意義について語っていただきました。今回は、そのコミュニティをどのように形成し、活性化させていくかについて、もう少し具体的にお話を伺えればと思います。


林:

はい。実は、今日椎名さんと話していて改めて気づいたんですが、技術者同士の交流ってすごく大事な要素なんですよね。でも、自分がコンサル出身だからか、その視点が少し抜けていました。これはぜひ取り入れたいと思ったので、社内でも責任者と話して、具体的に進めていきたいですね。


椎名:

いいと思いますよ。技術のコミュニティって、昔から世界レベルでつながっているんですよね。インターネットが本格的に普及し始めたのが1980年代後半くらい。その頃は大学とか軍、あとはコンピューター会社くらいしかネットワークにアクセスできなかったですが、それでもすごく盛り上がっていて。ソースコードをみんなで開示し合っていたんですよ。


たとえば、UNIXやLinuxもそうですが、オープンソースで作られていて、「ここのコード、違うぞ」とか言いながら、みんなで修正し合っていた。僕もUNIXをガンガン使っていましたが、UNIX上で動くエディタに「Emacs(イーマックス)」っていうのがあって…まあ、知らないかもしれないけど(笑)。Emacsもオープンソースで、みんなが改良を重ねてライブラリに追加していったんですよ。そういうのがすごく楽しいわけです。






林:

なるほど、なるほど。


椎名:

エンジニアって、もちろん給料が高いほうがいいに決まってるんだけど、でも給料だけじゃ動かないんですよね。むしろ、それよりも「楽しいことができる環境かどうか」が大事だったりする。


「ここなら新しいことができそうだな」「面白い人たちがいるな」と感じられるかどうか。自分の技術やプログラミング、それらに関するディスカッションの満足度を満たしてくれる仲間がいるかどうかって、めちゃくちゃ重要なんですよ。だから、技術者同士がつながれるコミュニティって、本当に大事なんですよね。


林:

なるほど。椎名さんのお話を聞いて、改めて技術者向けコミュニティの重要性を実感しました。ぜひアドバイスをいただきながら、うまく形成していきたいと思いますので、よろしくお願いします。


椎名:

何かあれば、ぜひ協力しますよ。


もともと技術者って、学会発表をするじゃないですか。論文を書いて発表して、オーディエンスからガンガン質問が飛んできて、それが終わらなければ別室に行って議論が続く…みたいなカルチャーがあるんですよね。


これが今はインターネットを通じてオープンになり、いつでもどこでもディスカッションできるようになっている。昔はネット上でやっていたけど、今はSlackみたいな技術的なディスカッションツールがたくさんあるので、そういうものをうまく活用するのも重要ですよね。


日本語と英語の壁はだいぶ低くなってきたとはいえ、日本語でエンジニア同士が自由に話せる場があると、すごく喜ばれると思いますよ。


林:

確かに。


椎名:

そういうのをうまく運営していくことが、やはり重要ですよね。


林:

そうですね。だからこそ、AIのベンチャー企業をどれだけ取り込めるかが大事になってくると思っています。取り込めば取り込むほど、技術者同士の交流も活発になっていく。結局、我々がどれだけ魅力的なコミュニティを作れるか、そこがポイントですよね。


椎名:

ですね。コミュニティを盛り上げるには、議論を活発にする仕掛けが大事なんですよね。たとえば、議論のネタを提供するとか、話が変な方向に行きそうになったらうまく調整するとか。そういう役割を担う人がいることで、活気のある場になるんです。


林:

なるほど。



椎名:

でも、運営ってなかなか骨が折れる部分でもあるんですよね。今でこそ「コミュニティ」という言葉は当たり前のように使われていますけど、少し前はゲームの世界でよく使われていたんです。


たとえば、「あの裏道から行けるぞ!」「隠しキャラがいるらしい」みたいな情報を世界中のプレイヤー同士でやり取りしていた。そういうやり取りが楽しくて、コミュニティが自然と盛り上がるんですよね。


技術コミュニティも、そういったエンタメ的な要素をうまく取り入れていくのもアリだと思います。あとは、たまにはリアルイベントをやるのもいいですよね。


林:

なるほど。非常に参考になります。



―― ここからは、INTLOOPならではの視点として、「フリーランス人材とコミュニティをどう結びつけるか」というテーマにも触れていきたいと思います。INTLOOPにとって、フリーランス人材は重要な強みとなる部分です。その点について、お二人の考えをお聞かせください。


林:

これまでの話ともつながりますが、「技術者コミュニティ」という観点で考えると、現在、当社には4万8000名のフリーランス登録者がいるんですよ。


椎名:

それはすごい。


林:

しかも、毎月約700~1000名ずつ増えているんです。技術者の方もフリーランスとして活動していると、学ぶ場や議論できる場が少ないという課題があると思うんですよね。フリーランスも、この働き方ならではの「寂しさ」という要素もありますし。


そういった場を提供できるようなコミュニティをうまく運営していくことが大事だと思っているのですが、具体的にどうすればいいかは、まだ手探りの部分もあります。そのあたり、椎名さんのアドバイスもいただきながら、より良い形にしていければと考えています。






椎名:

そうですね。まず4万人以上いるのが、なかなかすごいことだと思います。ただ、コミュニティの場合、ディスカッションするテーマごとにコミュニティが分かれていることが多いんですよね。


だから、どういうテーマやカテゴリーでグループを作るのか、その設定が重要になってくると思います。


林:

なるほど。もう少し詳しく教えていただけますか?


椎名:

議論の場が荒れ始めると、くだらない喧嘩みたいなものが起こりがちなんですよね。「それは違う!」「いや、お前がバカだ!」みたいな言い合いが始まると、もうみんな嫌になって抜けてしまう。そうならないようにしつつ、ある程度レベルの高いディスカッションに持っていくことがすごく重要なんです。


林:

なるほど、いわゆる「ソートリーダー(※)」みたいな存在が必要ということですね。


※ソートリーダー(Thought leader):

特定分野で革新的なアイデアや視点を発信し、その分野をリードする人


椎名:

そうそう。ソートリーダー的な人がコミュニティの中でしっかりと目を配り、議論をいい方向に導いていくと、すごく良い場になるんですよ。いわば「ご意見番」のような人が常にいると、健全なコミュニティが保たれるんですよね。


だから、INTLOOPさんがコミュニティを運営するのであれば、そういうご意見番になれる人をうまく見つけて、巻き込んでいくことがすごく重要だと思います。


林:

なるほど、わかりました。じゃあ、一人目は椎名さんということでお願いします(笑)







椎名:

(笑)

いや、でも本当にそうなんですよね。


問題なのは、コミュニティ運営では発言がすべて書き込みとして残るということ。だから、ロジックをしっかり組み立てておかないと、思いつきで投稿したものがすぐに突っ込まれてしまうんです。ちょっとしたアラもすぐに見つかって、攻撃の的になりやすい。


林:

なるほど。


椎名:

だから、「これでいいのかな?」と悩みながら投稿することもよくあります。でも、技術系のコミュニティなら、そういう議論が活発になって、「こんなソース書いてみました!」みたいに、お互いに知識を深め合う場になれば面白いですよね。


林:

ありがとうございます。それは、ぜひやっていこうと思います。




*****



今回の対談では、技術者コミュニティの形成と活性化について意見を交わしました。エンジニアの心を動かすのは、必ずしも高い報酬だけではありません。むしろ、技術を追求できる環境や、刺激的な仲間との交流こそが重要です。


また、コミュニティを円滑に運営するには、議論を活発にする仕掛けや、方向性を調整する役割が不可欠。ソートリーダーのような存在が適切に議論を導くことで、質の高い対話が生まれ、健全なコミュニティの維持につながります。現在、4万8000名以上のフリーランス人材とネットワークを築くINTLOOPでも、今後、技術者が積極的に学び、交流を深められる価値ある場を創出していきます。


最終回となる次回(第5回)「大企業×スタートアップの最適解。真の価値を生むコラボレーションとは?」では、大企業がスタートアップコミュニティをどう活用すれば成果につながるのかをテーマに、企業とコミュニティの相互作用が生み出す価値を語ります。ぜひ、そちらもあわせてご覧ください。


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