熱量の高い「共創」が成長を加速する。INTLOOPの協業戦略|林代表インタビュー(第2回/全3回)
- INTLOOP Ventures Innovation Community編集部
- 2月28日
- 読了時間: 9分
更新日:4月29日

企業が大きな成長を目指す上で、他社との連携やパートナーシップは欠かせません。近年、INTLOOPでも大手企業やスタートアップとの協業を積極的に進めています。
しかし、その提携の多くは、単なるビジネス戦略ではなく、「人とのつながり」から生まれたもの。では実際、INTLOOPではどのようにして他社と信頼関係を築き、新たな価値を創造しているのか――。今回は、INTLOOPが取り組む協業の在り方や、その根底にある想いに迫ります。
―― INTLOOP社では、大手企業やスタートアップとの提携が増えていますね。そういった出会いはどのように生まれてきたのでしょうか?
我々の社名INTLOOP には、「Introduction(紹介)のループ」という意味が込められています。実際、これまでの提携や協業の多くは、人とのつながりの中から生まれてきました。
最初から業務提携や資本提携を前提として話が始まるわけではなく、まずは情報交換の場を持ち、お互いの考えやビジョンを共有するところからスタートします。そうした会話の中で、「一緒にやったら面白いのでは?」と自然に共感・共鳴し合える企業が少しずつ増えてきた、というのがこれまでの経緯です。
また、上場を機に、さらなる成長のためには外部の企業との連携がますます重要になるという状況もあり、出会いの輪がより広がっていると感じています。

―― 2024年にはスタートアップと協業されていますが、協業のポイント、意識されたことを教えてください。
今回は、Ideinさん(Idein株式会社)と提携しました。スタートアップとの協業は、単にパートナーシップを組むだけじゃなく、一緒にサービスを作っていくことが重要だと思っています。
正直なところ、同じような領域の会社は、日本国内に限らず海外にもたくさん存在します。ですから、「こういうサービスが必要だ」という視点だけなら、別に他の会社でもいいわけです。でも、なぜ当社があえてイデインさんと組んだのかというと、単にソリューションを提供するだけではなく、一緒にサービスを作り、成長させることに重きを置いているからなんです。
たとえば、新しいソリューションを市場に出すとき、単体のプロダクトだけではなかなか売れないことが多いです。どんなにいい技術やサービスでも、それだけで成功するとは限らない。だからこそ、どうやってサービスを発展させていくか、どんな形で市場にフィットさせるのかという部分も含めて、一緒に考えていく必要があると思っています。単なる提携じゃなくて、「一緒に頑張ってサービスを作っていく」という意識ですね。ある意味「心中」じゃないですが、並走しながらしっかり形にしていくというのが、我々のスタートアップとの関わり方です。

―― スタートアップと提携する際に、「お互いに大切にしたいこと」や、相手を見極めるポイントはありますか?
そうですね。いろいろありますが、特に重要視しているのは、その経営者がどれだけ今のビジネスに本気で賭けているかという点です。
話していると、その熱量や覚悟って自然と伝わってくるものです。これまで多くの経営者の方とお会いしてきたので、「この人、本当に自分のビジネスに賭けてるな」と感じるかどうか、ある程度はわかるつもりでいます。逆に言うと、その覚悟が見えないと、提携を進めるのは難しいですね。
本気度を図るポイントの一つは、これまでどれくらい「自分で張ってきたか」です。時間もそうですし、お金の使い方も含めて、どれだけ自分のリソースを投資してきたか。その積み重ねは、話していると自然と見えてきます。たとえば、「資金調達しました」っていう話があったとしても、本人がどれだけリスクを取っているのか。単に「やりたいことがある」だけじゃなくて、自分自身をどれだけ賭けてきたのか。そこをしっかり見極めるようにしています。

―― 御社のように、優秀なフリーランスやスタートアップの知見を活用しながら成長したいと考える企業に対して、何かアドバイスはありますか?
いくつかの企業にお話ししているのですが、特に大手企業がCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を通じてスタートアップに投資するケースは増えています。しかし、投資した後に放置してしまうことが少なくありません。
投資した企業を単に資金提供する対象としてではなく、しっかりと伴走しながら成長させる視点を持つことが重要だと考えています。その会社のソリューションを自社のビジネスに取り込み、実際に活用する動きを積極的にすべきです。
また、大手企業に対してもう一つお伝えしているのは、国内市場を目的としたベンチャー投資にこだわらないでほしいということです。国内のプレイヤー同士で競争するのではなく、資本力のある大手企業は海外市場を目指してほしい。そうでなければ、日本の限られた市場の中で大手が参入し、スタートアップの成長機会を奪ってしまう可能性があります。
INTLOOP Venturesとしても、将来的には海外のベンチャーも含め、大手企業と協業していきたいと考えています。
―― いわゆる一般的なCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ではなく、「生態系」を作ろうとされている印象がありますが、参考にしたモデルや近しい事例はありますか?
実は、特定のモデルを参考にしたわけではありません。ただ、ベンチャーの方々と話をしていく中で、資金調達のニーズだけでなく、「お客さんになってくれる企業」や「一緒にソリューションを考えて売上を作れる企業」への強い要望があると感じました。私自身、まさにそういった場を作りたいと考えているので、INTLOOP Venturesに参加する大手企業には、単なる資金提供にとどまらず、本気でスタートアップと共に成長する姿勢を求めています。
資金調達だけを目的とするのであれば、CVCとして投資するだけではなく、「一緒に成長させるソリューションを考える」「自社に取り入れる余地があるなら積極的に活用する」という姿勢を持つ企業にこそ、ぜひ参加してほしいですね。

―― まさに資金調達の場にとどまらず、中長期的な視点で「生態系づくり」を目指されているのですね。その想いを形にする上で、人選の際に意識していることはありますか?
まず、私たちの側のメンバー選びについてですが、コミュニティの中心となるメンバーには、「ベンチャーに興味があり、何らかの形で関わった経験がある人」を重視して選んでいます。
やはり、創業時の苦労や成長過程での課題を理解できることが重要です。この会社も私一人で立ち上げたところからスタートし、成長の過程でさまざまな困難を乗り越えてきました。まさに、そうした経験を共有できるかどうか。直接の起業経験がなくても、間接的に関わったことがある人や、「ベンチャーに強い関心を持っている人」を中心にメンバーを選び、コミュニティを構成しています。
―― AIの活用やDXが進むと、どうしても効率化や生産性向上に目が向きがちですが、今日のお話を伺っていると、非常にウェットな部分も大事にされていると感じます。一見すると相反するように思えますが、あえてそのような「無駄」に見える部分を残している理由はありますか?
コロナ禍ではリモート会議が主流になり、その文化もある程度は定着しました。しかし、コロナが明けた今、多くの企業が対面での業務に戻ってきています。イーロン・マスクがテスラでやったように「全員出社」を掲げる企業もありますよね。
その背景にあるのは、やはり「face to face」のコミュニケーションが信頼関係の構築に不可欠だという考えでしょう。どれだけAIが業務を効率化しても、営業やサービス業のように人と人との関係性が重要な仕事はなくならないと思っています。
たとえば、営業マン、飲食店のシェフ、ホテルのスタッフなど、人が相手に提供する価値が求められる仕事は今後も残るでしょう。信頼があるからこそ、「この会社と一緒にやりたい」と思えるわけです。だからこそ、対面でのコミュニケーションの価値を大事にし続けたいと思っています。

―― INTLOOP社は市場でも注目されるコンサルティングファームですが、改めてどのような会社なのか教えていただけますか?
難しい質問ですね(笑)。コンサルティングや人材を軸にしながら、社会に役立つ仕組みを常に模索している会社だと思っています。
「社会貢献」と言うと少し大げさかもしれませんが、まだ他の企業が手をつけていない領域に対して、どのようにアプローチできるかを考え続けているのが当社のスタンスです。もちろん、すでに競合がいる市場に参入することもありますが、なるべくホワイトスペースを見つけて、そこで価値を提供できるようなサービスを展開したいと考えています。
―― INTLOOP社にとって、まだ足りないピースはどのような部分でしょうか?
まさに最近プレスリリースでも発表したのですが、アサヒ食品さんと共同で「食共創パートナーズ」というファンドを立ち上げました。
日本企業の中でも、特に地方の企業はまだDXへの感度がそこまで高くないところも多く、販路の開拓においても人脈やツテが不足しているケースが少なくありません。特に海外進出に関しては、そのハードルが一層高くなります。
そうした課題をサポートしていくことが、今のINTLOOPにとってまだ足りていないピースだと考えています。今回立ち上げた食共創パートナーズのファンドは、まだ小規模なものですが、今後さらに大きく育てていく予定です。
―― 林社長にとって、「海外」は特別な思いがあるのでしょうか?
そうですね。実は、もともと私自身が貿易の仕事をINTLOOPの中で手がけていました。上場前に監査法人や各方面からの指摘があり、一度ビジネスとしては止めたのですが、当時は上海・シンガポール・香港などに自ら足を運び、日本のお酒や食品を売り歩いていたんです。そういった経験もあり、海外にはもともと強い関心を持っています。
現在は INTLOOP Venturesや食共創パートナーズといった取り組みを通じて、まずは海外にアクセスしやすい領域から展開していこうと考えています。
最終的にINTLOOP本体としてどのように海外展開を進めていくかは、今後しっかり検討していく必要がありますが、少しずつ海外市場へと足がかりを作りながら、再び挑戦していきたいと考えています。
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本記事では、INTLOOP社が推進する協業戦略について、その背景や成功のポイントをお伝えしました。大手企業やスタートアップとの共創を通じて、単なる提携にとどまらず、サービスの共同開発や市場創出に取り組む姿勢は、まさに「共に成長する」ことを重視したINTLOOP流のアプローチといえるでしょう。
第3回の記事(「INTLOOP発、新時代のイノベーションコミュニティ『IVIC』が目指す未来」)では、INTLOOPが新たに立ち上げたイノベーションコミュニティ「IVIC」が目指す未来と、について詳しくご紹介します。ぜひあわせてご覧ください。