特別対談:孤独な経営者に必要なのは“つながり”。IVICが拓くスタートアップ支援の新たな地平|Idein中村氏 × INTLOOP Strategy藤川(第3回/全3回)
- INTLOOP Ventures Innovation Community編集部
- 3月7日
- 読了時間: 10分
更新日:5月13日

スタートアップ経営において、「ヒト・モノ・カネ」の課題は避けて通れません。しかし、これらを一人で解決するのは難しく、時には孤独を感じ、行き詰まることも。そんな悩みを乗り越えるために生まれたのが、INTLOOPが立ち上げた新たなスタートアップコミュニティ「IVIC」です。
対談最終回となる本記事では、IVICが提供するネットワークの価値と、スタートアップが成長するための「つながり」の重要性について、Idein株式会社の代表・中村氏とINTLOOP Strategy株式会社の代表・藤川が語り合います。スタートアップ経営者が積極的に「人と会う」ことで得られるものとは――。
―― 中村社長にお聞きします。スタートアップの人たちが、コミュニティを活用するコツや秘訣があれば教えてください。
中村:
まずは「とりあえず行く」ことですね。私は基本的に、飲み会やイベントに誘われたら断らないタイプで、とにかく人と会う機会を大切にしています。なぜかというと、人との出会いがチャンスを生むからです。
たとえば、
社員候補になるかもしれない
投資家との出会いにつながるかもしれない
顧客になってくれるかもしれない
アイデアを提供してくれるかもしれない
パートナーになる可能性もある
そう考えると、シンプルに「行動量」が大事だと感じています。考えるよりもまず行動。とにかく人と会うことを優先し、さまざまなコミュニティに積極的に参加しています。
その中で、「ここはいいな」と思うところがあれば継続的に関わるし、逆に自分にフィットしないと感じたらすぐ離れることもあります。大事なのは、まず飛び込んでみることですね。

―― 藤川さんからは、今後のIVICの展開や期待についてお聞かせいただければと思います。
藤川:
大きく2つあります。
1つ目は、「気軽に参加できる環境づくり」です。
この点については、プログラムをリードするメンバーと日々議論しており、スタートアップの方々ができるだけ気軽にIVICに参加できる仕組みを整えたいと考えています。
たとえば、SNSやSlackを活用したチャットベースのコミュニケーションを強化することで、気軽に会話できる場を作る予定です。現在のようにエントリーフォームを記入して、企業情報を細かく記載するフローだけでは、参加のハードルが上がってしまう。そこで、まずは気軽にチャットで話せる場を提供し、スムーズにコミュニティに入れるようにすることを目指します。
2つ目は、「より多様な支援の充実」です。
INTLOOPは「ピープル(人)」を重視するバリューを掲げていますが、そもそもヒト・モノ・カネは企業経営に不可欠な要素です。INTLOOPが持つフリーランスネットワークを活用し、スタートアップにとって必要な人材支援はもちろん、資金調達面でも支援を拡充していきます。
たとえば、INTLOOP自体が資本業務提携として出資するケースもありますが、それだけでなく、VCや機関投資家とのネットワークを活かし、資金調達の機会を提供できればと考えています。また、スタートアップが市場に出るためのサポートとして、政府機関(経済産業省など)とのつながりを構築し、補助金獲得や支援を受けられるような仕組みも検討しています。
さらに、人材支援においても、「重たい支援(長期的な人材マッチング)」から「軽い支援(スポット相談)」まで、幅広い選択肢を用意する予定です。具体例を挙げると、コミュニティでの出会いから「次回商談しましょう」となった際に、小規模なディスカッションや有償の情報提供セッションを行うなど、スタートアップの資金状況に合わせた細分化された支援メニューも用意していきたいと考えています。
最終的には、「スタートアップ」という主語で、あらゆるニーズに対応できるような支援体制を充実させることを目指しています。

―― 中村さんも、スタートアップの皆さんに向けて伝えたいことはありますか?
中村:
すでにいろいろお話ししましたが、もう一度、特にCEOの方に伝えたいことがあります。それは、とにかく人と会い、ネットワークを広げることの重要性です。
スタートアップの成長は、自分のアイデアや仮説をどれだけブラッシュアップできるかがポイントです。どれだけ練り上げたプランでも、実際に人にぶつけてみなければ価値は生まれません。だからこそ、積極的に人と会い、対話を重ねることが大切です。
また、スタートアップはリソースが限られているため、「人に頼る」ことも重要な経営スキルです。こうしたコミュニティを活用することは、経営者としての手腕の一つだと思います。私自身も皆さんとお話ししたいと考えていますので、ぜひ参加していただければと思います。
―― スタートアップコミュニティが「傷の舐め合い」の場にならないためには、どのような工夫が必要でしょうか?
藤川:
運営側の取り組みが大きな鍵を握ると考えています。実際、IVICでは「傷の舐め合い」というような雰囲気は一度も生まれていません。それは、しっかりとソリューションを持つ企業や専門家を招き、建設的な議論ができる場を提供しているからです。
大企業や政府機関、さらには優秀なフリーランスのスペシャリストを交え、経営者に対して適切なアドバイスができる環境を整えることで、常に前向きで実りのあるイベントを開催することを意識しています。私たちは、単なる共感の場ではなく、具体的な課題解決につながるコミュニティを目指して運営していきます。
中村:
そもそも「傷の舐め合い」ばかりしてしまう人は、ハッキリ言いづらいですが、あまり経営者には向いていないと思いますね。そういう場合は、思い切ってコミュニティから離れてもらった方がいいのかもしれません(笑)。
藤川:
そうですね(笑)。

―― 中村さんにお伺いします。エンジニア気質の経営者にとって、コミュニティに馴染むのはハードルが高いと感じます。中村さんご自身は、どのように努力して馴染んでいったのでしょうか?
中村:
自分の場合は、創業する2年前にアメリカの研究所に一人で放り込まれた経験が大きかったですね。毎日、異なるタイプの人たちと会話することが避けられない環境に置かれたことで、メンタル的にタフになりましたし、人とのつながりの重要性を実感しました。
その経験が起業にもつながっていて、「人とどんどん知り合うこと自体が価値になる」と強く認識するようになったんです。創業後も、とにかく多くの人と会い続け、毎日のように会食や飲みの場を通じて関係を築いてきました。振り返ると、そうした交流が今の自分につながっていると感じますし、数え切れないほどの貴重な経験を得てきました。
やはり、キャラクターを変えるためには成功体験が必要です。そのためには、最初は強制的にでもそうした場に飛び込むことが大切かもしれません。たとえば、ピッチイベントのような場は、エンジニア気質の人が人とつながるきっかけとしてとても良いと思います。
―― エンジニアの経営者にアドバイスするとしたら、「とにかく人と会いに行け」ということになりますか?
中村:
そうですね。加えてもう一つ重要なのは、メンターをつけることです。自分も先輩起業家にひたすら叩かれました。「何を遠慮しているんだ」と。
たとえば、「こんな相談をしたらくだらないと思われるんじゃないか」「相手の時間を奪って怒られるんじゃないか」と考えてしまうこと、ありますよね。でも、そんなことを気にしている暇があったら、まず行動しろ、と。実際に先輩起業家に相談しに行くと、アドバイスというより、むしろ檄を飛ばされることも多かったですが(笑)、そういう経験がすごく大事なんですよね。

―― 続いて、事業に向かう時間と外交のバランスについて伺いたいです。外交ばかりに時間を割いても事業は成長しないという声も聞かれますが、両者のバランスはどのように考えればいいでしょうか?
藤川:
なるほど。まず結論から言うと、私の中では事業と外交は繋がっているものなんですよね。外交をすることで新しいチャンスや機会が得られますし、その中で例えば自社のソリューションを必要とする企業と出会い、商談を経て取引が始まることもあります。そういう意味で、事業推進と外交はエンドtoエンドで繋がっていると考えています。
ただ、ご質問の意図として「事業とは直接関係のない外交」についても含まれているのかなと思いました。それに関しては、一概にどちらが良いとは言えません。企業の成長ステージによってバランスが変わるからです。たとえば、まだ事業の種を見つけるフェーズなら、ひたすら打席に立ち、新たな機会を探しに行く必要があります。その場合、既存事業とは少し離れた外交活動が増えるでしょう。一方で、事業の成長が鈍化してきたら、内政に重点を置き、事業の立て直しにフォーカスする方が良いかもしれません。その時々の状況に応じてバランスを調整するのが重要ですね。
中村さんはどのように考えていますか?
中村:
そうですね。私も外交と事業は明確に切り分けられるものではないと思っています。特に営業活動などはその両方にまたがる部分が大きいですし、どのフェーズにいるかによっても変わります。
成長フェーズが進むにつれて、COOの役割がより重要になります。特にレイターになると、組織の課題が増えて、内政に目が向きがちです。当社も最近は、意識的に外部との関係を強化するようにしています。たとえば、経営会議でも組織や人の話だけで終わるのではなく、意図的に半分は事業や未来の話をするようにしています。また、新しい機会を積極的に探しに行くことも意識していますね。
今、具体的な数字として持っているわけではありませんが、私自身の時間の3〜4割は外向きの活動に充てるように意識しています。スタートアップは常にジャンプしなければならないので、内政だけに集中していては非連続的な成長は生まれません。
藤川:
間違いないですね。
中村:
もちろん、今あるものの連続的な成長も大切ですが、そこにどうやって次のジャンプのための階段を作るか。そのためには、CEOの外交活動がチャンスを掴むきっかけになると思いますし、非常に重要な要素だと考えています。
―― もともとINTLOOPでは、比較的幅広い支援をされている印象です。そんな中で「こういう領域や特徴のスタートアップなら、よりお手伝いしやすい」というものがあれば教えていただけますか?
藤川:
やはり、これは明確に言えることですが、日本は2030年に向けて労働人口が大幅に減少していきます。すでに現在でも多くの業界で人材不足が経営課題となっています。
INTLOOPは現在、社員が千数百名規模ですが、それに加えて、自社の登録プラットフォームには4万人以上のフリーランスがいます。つまり、合計で約4万5000人の労働力を市場に提供できるのが、我々のコアバリューです。
特に、人材に関するニーズが強いスタートアップには、より積極的に支援が可能だと考えています。例えば、特定のファンクションに必要な専門人材が欲しい場合や、ハイレイヤーのCxOクラスの人材が必要な場合など、幅広い要望に対応できます。
企業が成長する上では「ヒト・モノ・カネ」が重要な要素ですが、このうち「人」に対するニーズが特に強い企業に対しては、INTLOOPが主体となって支援できる範囲が広がると考えています。

―― 最後に、お二人からひと言ずつメッセージをお願いします。
藤川:
IVICには、実際にAIのスペシャリストである中村さんもメンターとして参加予定です。私自身も、スタートアップの皆さんと直接交流し、成長に向けたディスカッションを積極的に行いたいと考えています。ぜひ気軽にIVICにお越しください。お待ちしております!
中村:
今回のご縁で、私もINTLOOPさんのIVICでメンターを務めることになりましたが、ここに集まる皆さんから学びたいことがたくさんありますし、一緒に仕事をしたいと思うことも増えてくるはずです。私自身、このコミュニティに参加することを楽しみにしています。ぜひ皆さん、気軽に参加してください!お会いできるのを楽しみにしています。
*****
本記事では、IVICがスタートアップ支援において果たす役割、そしてスタートアップがコミュニティを最大限に活用するためのポイントについてご紹介しました。
特に事業の初期フェーズでは、積極的に人とつながり、ネットワークを広げることが重要です。だからこそ、IVICはスタートアップが気軽に参加できる環境を整え、多様な支援を提供することで、事業の加速をサポートしてまいります。
挑戦を続けるスタートアップの皆さまにとって、IVICのコミュニティが価値あるものとなるはずです。ぜひ、奮ってご参加ください!