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2030年、日本はどう変わる? 人口減少時代に求められるAIとテクノロジーの力(第1回/全5回)

  • INTLOOP Ventures Innovation Community編集部
  • 4月11日
  • 読了時間: 11分

更新日:5月28日




イントロダクション


2030年、日本社会は大きな転換点を迎えます。人口減少による労働力不足や経済の縮小、そしてそれを補うAIやデジタル技術の進化——これらの変化は、私たちの働き方やビジネスのあり方にどのような影響を及ぼすのでしょうか?


今回の対談では、企業経営やコンサルティングの視点から未来を見据えるINTLOOP株式会社・林博文と、マーヴェリック株式会社・椎名茂氏が、日本のビジネスの未来、スタートアップの成長機会、そしてコミュニティの活用について語り合います。


第1回となる本記事のテーマは「2030年に向けた課題と可能性」。AIの活用はどこまで進むのか? これからの人材育成はどう変わるのか? 日本のビジネス環境はどう適応していくべきなのか? こうした問いを通じて、AIやテクノロジーを活用しながら生産性を向上させ、持続可能な成長を実現するための道筋を探ります。





―― まずは大きな社会問題とされる「2030年問題」について話を進めたいと思います。林さん、2030年の日本はどうなっていくとお考えでしょうか。


林:

はい。2030年には、すでに人口減少がかなり進んでいて、かなり労働生産性を引き上げていかないと、これまでのような経済成長を維持するのが難しくなっているでしょう。特にAIやテクノロジーを活用して、いかに生産効率を高められるかが問われるところですね。


椎名さんはこの状況をどう捉えていますか?


椎名氏(以下、椎名):

2030年まで、もうあと5年。意外とすぐそこなんですよね。だから「5年で何がどれだけ変わるのか?」という実感は湧きにくいかもしれませんが、確実に人口は減っていく。特に地方は顕著でしょう。東京はそこまで大きく減らないとしても、日本全体で見れば大幅な人口減少になります。


それに、子どもの数もどんどん減っていますよね。今は年間80万人を切っていますが、僕の世代は160〜170万人くらいでした。その前のベビーブーム世代になると、年間200万人以上生まれていたわけです。それが今や3分の1。ものすごいスピードで減少しているんですよね。


林:

まさに私の世代が、そのベビーブームの時期ですね。


椎名:

そうですよね。3分の1にまで減っているって、やっぱり驚きます。この流れを考えると、今後、日本のGDPも大きな影響を受けるはずです。GDPは人口と強く関連しているので、このままでは大きく下がる可能性が高い。その減少分をどう補うのか、というのが非常に重要なテーマになってくると思います。


そう考えると、やはりAIの活用は避けて通れないですよね。生産性の観点でいうと、日本の一人当たりのGDPはすでにかなり低くなっています。これはつまり、生産効率が悪いということ。でも、たとえばトヨタのような製造業の現場では、生産性は、いまだに世界トップレベルなんですよ。ミスが少なく、不良品もほとんど出ない。


一方で、ホワイトカラーの分野はまだまだ非効率な部分が多い。無駄な会議が多かったり、資料作成に時間をかけすぎていたり。こうした部分こそ、AIの活用によって大きく変えられる余地があるんじゃないかと思います。最近、生成AIが注目されていますが、特に自然言語処理系の技術が進化すれば、業務の効率化は一気に加速するでしょうね。




林:

すでに当社を含め、メールの処理やスケジュール調整など、身近な業務で生成AIが使われ始めています。たとえばレポート作成でも、ChatGPTに問い合わせれば要点をまとめた回答が返ってくるようになっています。この流れは今後ますます加速していくでしょうね。





椎名:

そうですね。ものすごいスピードで進んでいます。私たちはコンサルの仕事をしていますが、コンサルの業務って調査にかかる時間が結構大きいじゃないですか。


林:

そうですね、多いですね。


椎名:

それがChatGPTのようなツールの登場で、調査の工数が一気に削減されました。特にリサーチ系のAIツールはどんどん進化していて、「もうすでにうまくまとまっているな」と思うようなものが次々と出てきています。だから、こうしたAIに置き換えられる部分はどんどん置き換わっていくでしょうし、その変化を前提に、新しい仕事のスタイルをどう確立するかが重要になってくると思います。


先日、地方で講演を頼まれてAIに関するネタを探していたんですが、地方自治体って新しい条例を作るのが好きなんですよね。でも、中には「桃の日」とか「イチゴの日」とか、ちょっとした特産品関連の条例もあったりして。


林:

ああ、ありますね。


椎名:

こういう条例を作るには当然、条文を書かないといけない。でも、今はもう条文作成もAIが自動でやってくれますからね。論理的な文章を作るのはAIの得意分野なので、これまで手間がかかっていた作業が一気に効率化される。だからこそ、こういったツールをどう活用するか、使い方に慣れていくことが大事なんだと思います。


林:

そうですね。今って、いわゆる「仕事のための仕事」みたいなものが、まだかなり残っていると思うんです。それがなくなると困る、という人たちもまだ多い状況じゃないですか。でも、そこを少しずつ、あるいはドラスティックに削減していかないと、非効率な部分がずっと残り続けてしまう。それこそ省庁や官公庁、銀行なんかを見ても、まだそういう部分が多くあるなと感じますね。


椎名:

いや、本当にめちゃくちゃありますよね。


いまだにハンコ文化が根強く残っているところも多いですし、ハンコがいいのかサインがいいのか、どっちが適切なのかも正直わからない。でも、結局、証跡を残す手段として物理的なものを使うっていう習慣が続いているわけですよね。


でも、考えてみれば、三文判なんてどこでも買えるから、誰が押したのかなんてわからない。サインにしても、クレジットカードのサインがようやく廃止されるくらいです。あんなの、適当にグチャグチャっと書いても、同じものかどうかなんて誰も判別できないから、結局どれでもOKになっていて。そうなると、不正の温床になりかねない。だからこそ、AIやデジタル技術の力を使って、こういったプロセスをどんどん簡素化していくべきなんですよね。


林:

本当にそうですね。今日の質問リストの中に「今後、どの産業でAIが活用されると思いますか?」っていう項目がありましたけど、結局のところ「全部使える」っていうのが答えになっちゃいますよね。


椎名:

ホワイトカラーの仕事は、もう全部いけるでしょうね。


林:

本当に、どの業界でもAIは活用できますよね。


椎名:

いわゆるブルーカラーの作業は、まだまだロボットでは難しい部分が多いんです。たとえば、机を拭く作業。ロボットを使えばできるかもしれませんが、そのために何百万円もするロボットを動かすより、人がやったほうがよっぽど効率的です。物理的な作業に関しては、まだロボットが人間の繊細な動きを再現しきれていないのが現状です。


一方で、文書作成やドキュメント管理など、いわゆるホワイトカラーの仕事は、これから驚くほどの速さで変化していくでしょう。なくなるというより、形が大きく変わっていくはずです。





林:

そうですよね。先ほど椎名さんもおっしゃっていましたけど、たとえば飲食店の清掃係もそうですが、逆に料理を作る人や、ホテルなどでサービスを提供する人は、より専門的なスキルが求められる時代になってくると思います。


ホワイトカラーに関しても、専門領域の知識が深い人がどんどんフォーカスされていくようになるでしょうね。


そうなると、僕が少し気になっているのが、新卒の人たちをどうやって育てていくのかという点です。これは、これからの企業にとって大きな課題になってくると思うのですが、椎名さん、そのあたりはどう考えていらっしゃいますか?


椎名:

新卒、勝手に育ってるから。


林:

ははは(笑)


椎名:

でも実際、OJTの場がないんですよ。


林:

そうですよね。


椎名:

たとえば、今の若い人たちはもう議事録を取らされなくなっていますよね。昔なら、新人はまず議事録を取るのが仕事だった。でも今は、会議を録音して、ボタンを押せば自動で議事録が生成される。そうなると、「聞き取って、重要なポイントを整理して、文章にまとめる」という能力を鍛える場がなくなってしまう。もちろん、あえてそういう経験を積ませることはできるかもしれませんが、わざわざ二重で作業をさせるのも非効率ですからね。


でも、議事録を取らなくなるということは、会議に参加する新卒たちに「お前もちゃんと意見を言えよ」と求められる状況が増えるということでもある。いきなり「何か意見ある?」って振られるわけです。となると、新卒でも即戦力の知識を持って臨まなければならない。


ただ、即戦力といっても、まだ社会経験がない新卒にそれを求めるのは難しい。でも今はAIがあるおかげで、事前に「この会議ではこういう議論になりそうだ」と調べて準備できるようになっています。


そうやってAIを上手く活用することで、むしろ僕らみたいな頭の固いベテランよりも、新卒のほうが柔軟に新しい視点で意見を出せるようになるかもしれない。しかも、AIを通じて過去のデータを参照すれば、それなりの裏付けがある意見も出せるようになりますよね。


そして、さらに進化してしまうと、「そもそも人間が意見を出す必要あるの?」って話になってしまうかもしれない。最初からAIに聞いたほうが早いんじゃないか、という流れになってしまう可能性もあるわけです。


林:

そう考えると、コンサルティングの仕事って、やっぱり最初の2〜3年で仕事の基礎を学ぶことが多いじゃないですか。先輩にレビューしてもらって、赤ペン先生みたいに修正を受けながら成長する。でも、それが難しくなってくる、と…。


椎名:

そうですね。できなくなりますね。


林:

そうなると、新卒の子たちは大変だろうなと思うんですよね。


椎名:

新卒育成のやり方や考え方自体が、今後変わっていくんじゃないかという気がしますね。


林:

そうですよね。すると、育成に関するビジネスチャンスもあるんじゃないかと密かに思っていたんですが。


椎名:

ビジネスチャンス、あると思いますよ。それに育成だけじゃなくて、教育全体のあり方が変わってくるはずです。日本の教育の課題っていろいろ言われていますが、その根本にあるのは大学受験だと思うんです。日本では高校の段階で文系・理系に分かれますよね。でも、アメリカではそこまで明確な分け方をしないので、理系の人が文系の仕事をしたり、その逆もあったりする。でも日本は、受験の段階で進路が決まってしまう。ある意味「受験のせい」なんですよね。


たとえば、日本史の試験で「〇〇年の出来事を答えなさい」みたいな問題が出ますよね。「いいくにつくろう鎌倉幕府」って僕らの世代は覚えましたけど、今は違うらしいんです。





林:

えっ、「いいくに」じゃないんですか?(笑) 知らなかったです。


椎名:

変わったみたいです。でも、大事なのは年号じゃなくて、その出来事の前後関係や因果関係ですよね。本来、歴史の学び方って「なぜこうなったのか」を理解することのはずなのに、テストでは年号を問う方が簡単だから、どうしてもそういう形式になってしまう。でも、これからの時代、記憶に頼るテストは必要なくなると思うんです。だって、AIに聞けば、調べればすぐにわかるわけですから。


だからこそ、歴史の流れをどう読み解くのか、洞察力を磨くような教育が必要になってくると思うんです。それを具体的にどう実現するのかは、僕もまだわからないですが。とにかく教育が変わっていくことは確かだと思っています。


林:

確かに。そう考えると、教育ビジネスの分野でも今後、相当大きなニーズが生まれそうですね。


椎名:

そうですね。同じように、新人教育のあり方も変わってくると思います。AIが前提となった教育の手法が、これからどんどん出てくるでしょう。


林:

本当にそうですよね。実は、今年から始めようかなと考えていたくらいなんですよ。もうそろそろ動き出さないと、時代についていけなくなってしまいますし。


椎名:

ですよね。特に、これからの新人は生成AIをどんどん活用するようになる。そうなると、ベテラン社員よりも仕事のスピードや能力が上がることも十分ありえます。コンサル業界なんかは、特にそうなりやすいでしょうね。


林:

今年からやろうかな(笑)


椎名:

新人が「よっぽどいいことを言う」「資料を作るのが速い」となれば、企業の戦力構造も変わってきます。だからこそ、社員の「武装化」という意味で、企業は積極的にAIを活用させる方向にシフトしていくべきなんじゃないかなと思います。


林:

確かに、その流れは避けられないですね。




*****



2030年に向け、日本は確実に変化の時を迎えています。人口減少の影響は避けられず、経済や労働環境にも大きな変化が訪れるでしょう。しかし、同時にAIやデジタル技術の進化が、私たちの働き方や生産性を大きく向上させる可能性も秘めています。


「ホワイトカラーの仕事はAIに置き換えられるのか?」「人間にしかできない仕事とは?」こうした問いが、今後ますます重要になっていくはずです。


対談第2回記事「AI活用で生き残る企業、乗り遅れる企業──分かれ道はどこにある?」では、AIの活用が企業の未来をどう左右するのかを深掘りします。そちらもあわせてご覧ください。


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